現代人が崇拝するお金とは何か!? お金の流れでわかる世界の歴史

元国税調査官である著者が歴史をお金の観点から、世界史上様々な国の栄枯盛衰を振り返る一冊。

なぜお金の流れで歴史を見直す必要があるのか!?

POINT本当に歴史を動かしているのは政治や戦争ではなくてお金・経済!!

この観点で歴史を見直すと、現代でも大きな影響力を持っているあの民族が思い浮かびますが、とにかく受験勉強中の学生にも歴史を忘れ気味の大人にもオススメの一冊!!

昨今の歴史は欧州諸国からの視点で描かれるものが多いですが、本書では古代エジプト、ローマ帝国の徴税制度が優れていた点に始まり、時代の先端を走っていた中国、ユーラシア大陸の交易路の礎を築いたモンゴル、欧州諸国を圧倒していたオスマン帝国。

更には現代に起きたリーマンショックまで、幅広く世界の流れを理解出来ます。

徴税・財務管理の重要性

世界史において、世の中のお金・富・財がどのように作られ、どう流れていったのか!?

狩猟民族だった人類は農耕により富・財を蓄え、個人が縄張りを持ち始めて人口増加、人の集まる場所にお金・物も集まって技術革新が起き、争いも増えていきました。

銃・病原菌・鉄の歴史から見える現代社会の歪んだ世界構造とは

次第に人の集まりが国家となりますが、その国家が繁栄するか没落するか…

POINTそれを決定付けるのは徴税・財務管理が公平に正しく行われてるかが鍵!!

本書を読み進めていくと、徴税・財政管理が上手く行われていると国は安定し、官僚が堕落し上手く税金が集められなくなると、次第に国は不安定になり滅亡していくのが如実に分かります。

ユダヤ人と世界経済

世界史をお金の観点で見た時に欠かすことが出来ないユダヤ人の存在。

平穏に暮らしていたかと思えば、エジプト人に連れ去られて奴隷(一説には重税を滞納したためとも言われてます)にされたり、自分達の国が建国出来たかと思えば分裂し他国に滅ぼされたり、長い歴史を通じてあらゆる土地でマイノリティーであり、異教徒故に度々迫害や追放の憂き目に遭ったり…

ユダヤ人は自分達を受け入れてくれる場所をもとめ世界をさまよう民族で、とにかく大変過酷な歴史を歩んでおり、迫害され続ける放浪の民故に厳しい環境で生き抜くため、お金に対して合理的な処世術を唱え、現代でも金融業などで大きな利益を生み出しています。

POINT放浪することで各地域の情報を沢山持ち、世界的な情報ネットワークを構築!!

オランダのアムステルダム、イギリスのロンドン、アメリカのウォール街などユダヤ人の行く先々の都市は世界の金融センターとなっている歴史的事実があり、ヨーロッパで迫害されたユダヤ人の多くが今もアメリカに移り住んでいます。

大航海時代の幕開け

中国の没落、モンゴル帝国崩壊後、世界経済で強い影響力を持ったのがオスマン・トルコ。

栄華を極めたローマ帝国に匹敵する程の力を持ち、1299〜1922年の600年続いた歴史ある帝国、また地中海と黒海を抑えていたので、オスマン帝国はヨーロッパ諸国とアジアが交易を司っていました。

その領土の大きさも驚愕ですが、当時のイスラム商人がアラビア数字を普及させたり(諸説あり)、現代に伝わる複式簿記を広めたりと、世界経済にも大きな影響を与えています。

どうしてここまで大きな帝国になったのか!?

POINT交通の要所である首都コンスタンチノープルを手中に納めたことも繁栄の要因!!

当時ヨーロッパからアジアへの交易を行うためには、シルクロード経由か東南アジアからマラッカ海峡を経て、ペルシャ湾に上陸する海上ルートの2つが最も採算がとれ、安全なルートですが、この両ルートの中央ターミナル的な役割を担うのが首都コンスタンチノープル。

当時のオスマン・トルコは中央集権制度が上手く進んでおり、数万の職業兵士を要していたので、ヨーロッパ諸国は軍事の面で太刀打ち出来ず、また地中海も支配されているので、仕方なく海上迂回ルートを開拓し出し、これが西欧諸国の大航海時代が幕開けとなります。

イングランド銀行の存在

イギリスと言えば世界で最初に産業革命を成し遂げた経済大国ですが、繁栄の裏では国家主導での海賊行為への支援、植民地政策と奴隷貿易など随分汚いやり方で莫大な利益を獲得。

歴史を動かすのは政治や戦争ではなくお金・経済ですが、なぜイギリスは海上覇権を獲得し、産業革命を実現出来たのか・・・その要因の一つにイングランド銀行の資本力が挙げられます。

当時ヨーロッパでお金を借りる場合、民間の銀行家を頼るわけですが、20〜30%の高利子が国の財政を圧迫、しかしイングランド銀行では利子が8%(18世紀の中頃には3%程度)と当時の水準ではかなり低かったので、戦費の調達や民間産業の充実化にも大きく寄与。

ちなみにイングランド銀行の起源を辿るとクロムウェルの革命にまで遡るそうです。

ユダヤ人の作家(アイザック・ディズレーリ)曰くクロムウェルの革命時には、得体の知れない力(3万人に及ぶ傭兵部隊)が暗躍しており、その資金の出どころはヨーロッパの大銀行家達だと。

結果的に名誉革命が実現し、投資家の念願であったイングランド銀行が設立。

銀行家がわざわざ投資する理由は自らの資本を増大させるための利権の獲得なのですが、現在も続くイングランド銀行の資本金の割合は王族が20%、残りは個人銀行家が独占しているそうです。

資本主義とプロテスタント

マックス・ウェーバーの著書「プロテスタンティズムの論理と資本主義の精神」によれば、プロテスタントが資本主義の原動力になった事実を説明、プロテスタントが主流になって以降、人々は信じ難いほどにストイック化、ある使命感にかられて守銭奴となり、利益追求に走ったと分析。

POINT特にカルヴァン派は欲望とは違った「信仰的動機」から黙々とカネを追い求めた!!

なぜそこまで金を稼ぐことに執着するのか!?

ルターの宗教改革により、人間が神から喜ばれる唯一の方法は修道院での禁欲やお布施ではなく、生活上の義務を遂行(人間の職業=神に与えられた使命)するとの考えが根付き、更にプロテスタントの一派であるカルヴァン派は、人間の社会的営みの全てが神の栄光を高めるために存在していると解釈。

カルヴァン派の根底には「予定説」があり、全ての未来は神によって事前に決まっており、人間には変えられないし、人間に自力救済の道などは無い、あるとすれば神の恩寵以外にありえない。

POINT人間のために神が存在するのではなく、神のために人間が存在するという考え.

どうすれば救われるのか分からないが、少なくとも神に計画・目的がある以上、天職として与えられた職業労働も、合理的に遂行し、有益なものでないと神に喜ばれない。

ではそれが出来たかを測るモノサシは!?

それは道徳性(神が望む働き方)・有用性(神の役に立つ働き方)・利益率(それらが出来た証し)の3つであり、その中でも特に利益を最重要視、なぜならば神の意図に適った労働をしているから利益が生まれるので、神のために働いて利益を得るのは、良いことであり、神に命じられていると解釈出来る。

POINT利潤が貯まれば貯まるほど「救いの確証」が深まる!!

このようにプロテスタントは資本主義を発展させ、経済的繁栄を手に入れたそうです。

戒律を守ってストイックに生きる排他的な姿勢はユダヤ教の考えに酷似しており、ユダヤ教とカルヴァン派の根底には神のために禁欲的に利益を追求、その果てにある選民という共通項がありました。

今ではそうした宗教的な色彩は抜け、競争の情熱が結びついていますが、資本主義の発展の裏には、このような彼らの精神があったとのことです。

世界大戦と経済

なぜ第一次世界大戦が起きたのか!?

原因がはっきりしない戦争と言われますが、経済でみると利害関係が明確との本書考察。

まず当時のドイツは急激な経済発展を遂げ、ヨーロッパ最大の工業国になった結果、英仏露の妬みを買い、またオーストリア・ハンガリー帝国との合併を危惧し、このままドイツを野放しにすればヨーロッパを制覇されるとの恐れが英仏露を結託させ、ドイツ叩きに向かわせてしまったと。

敗戦による大きな代償を支払ったドイツは、旧国土を回復すべくあちらこちらに侵攻、その一つであるポーランドは英仏と協定を結んでしたので第二次世界大戦が勃発。

ドイツは破竹の勢いでヨーロッパを制覇、二ヶ月でフランスを撃破、イギリスは本土に逃げ帰り、降伏か和平交渉は間近と思われていましたが、イギリスがアメリカに参戦を要求。

アメリカはドイツと戦争する理由が無く、当初参戦する気が無かったようですが、ドイツが掲げた欧州新経済秩序が戦争に駆り立て、あえなくドイツ撃沈。

ちなみに欧州新経済秩序とは金本位制を捨てた現行制度に近いものですが、当時世界の金の約4割を保持するアメリカにはこの上なく嫌な制度で、これを実現させるとヨーロッパ市場をドイツが独占、せっかく手に入れた経済大国の地位を失うことを恐れたようです。

フランス革命前夜のマネーゲーム

一国の通貨が世界の基軸通貨になることの矛盾、そしてブレトン・ウッズ体制崩壊後も、未だ有効な国際金融システムを見つかっていないと著者は指摘されていますが、現代金融システムが当たり前で正しく機能していると信じ込んでいた私にしてみれば驚愕。

そんな状況を反映して近年にはリーマンショックが起き、アメリカを中心に世界がマネーゲーム化の流れを促進、ちなみにこれは90年代のソ連崩壊も影響しており、共産主義が健全だった頃、西洋諸国は共産主義の台頭を恐れ、資本主義が暴走しないよう貧富の格差にも一定の配慮していたようです。

しかしソ連崩壊後は企業や投資家に際限なく自由を与え、便宜を図る政策に舵を切り、投資に対する減税を行い、投資を促進させる流れが活発化、それに伴って広がり続ける世界の貧富の差。

現在の状況がフランス革命前夜の社会に酷似していると、著者は本書で言及されていました。

虚構を信じる人類

最後に「お金は信用を数値化したもの」と言われますが、そんなお金を生み出した人類の特徴について、ユヴァル・ノア・ハラリがサピエンス全史の中で面白い事を書いていました。

一応歴史学上では約600万年前くらいに人類の祖先が誕生、約20万年前にその中の一部がホモ・サピエンスに進化、更に約7万年前、認知革命という認知的能力に大きな変化が生まれています。

その原因は未だ不明なのですが、とにかくサピエンスの新しい言語は、他動物に比べて柔軟で、周辺世界の情報を共有する手段(噂話)として発達、そして自ら伝説や神話、神々、宗教など架空の事物を生み出し、集団でそれらを信じるようになったそうです。

これが我々人類に一体何をもたらしたのか!?

POINT共通の神話は大勢で柔軟に協力する空前の能力をサピエンスに与えた!!

TaNA
これは歴史における宗教観の争いなどを見れば理解は出来ます。あと一応アリやミツバチも大勢で協力しますが、彼らのやり方は融通が効かず、近親者としかうまくいかないらしく、また群れをなす動物も100頭を超える集団はかなり稀なようです。

さてそんな人類も初期の交易では物々交換を行っていましたが、それに限界を感じたので、次第に価値の交換・保管・尺度測定が可能な貨幣や紙幣が誕生。

人類が共有する想像の中でしか価値を持たないお金は、物理的現実だけでなく、心理的概念であり、そして信頼こそお金の価値を生み出す際の原材料になると、本書でも紹介されています。

自らが生み出した架空の事物を信じれる人類だからこそ出来る芸当かも。