NETFLIXの最強人事戦略 – 人事が思い悩む人事考課と報酬制度設計

ヒト・モノ・サービスが急速にコモディティ化する時代、これに立ち向かう施策には「スキルの掛け算」や「お金では買えない経験を積むこと」が思い浮かびますが、技術職に+αできるスキルかつ、自分が興味を持てる分野が無いか考えた時、人事・組織作りが頭に浮かびました。

ちょうど縁があって入社した会社の人事制度も曖昧だったし、今後人が増える成長フェーズにあるので面白そうなのですが、人事・組織作りに関わった経験もなく、何から手をつけて良いのやら…そんなモヤモヤを抱えている時、人事に関わる知人から紹介されたのがこちらの一冊。

冒頭で全てのチーム・企業に当てはめる事は出来ないと紹介されており、確かに一読した感想は強者(グローバル企業)だから出来る戦略との印象が強く、多くの日本企業では導入が非現実的。

ただAmazonレビューは上々で読み物として面白く、組織作りや人事にお悩みの方には良い一冊。

公正な評価・報酬制度とは

グローバル企業らしい物言いが多い本書で、特に考えさせられたのが評価・報酬制度の話。

TaNA
ちなみに私は過去5社の企業で働いた経験(主にIT系のSES企業)があり、また知人を介して様々な企業の報酬制度について話を聞いてきましたが、企業の数だけ多種多様で正解の無い難しい課題の一つだと感じます。

誰もが頭を悩ませる報酬制度について、人事考課を元に報酬を連動させるのは一般的ですが、従来の制度では会社で働く期間に身につけたスキル価値が考慮されにくく、また市場水準を目安に給与レンジを決める方法では、トップパフォーマーの人材密度を高く保てない。

そこでNETFLIXでは人事考課と報酬制度を分離する方式を導入。

TaNA
そもそも人事考課は人事担当者の時間を食うし、業績や顧客への貢献度が不明なケースも多く、正直不透明…更に人事考課を行うことが業績評価指標(成長・利益・事業の成果を測る指標)の向上に繋がっているかと言われれば微妙ですね。

労力を費やす人事考課に力を入れるより、顧客に優れた製品・サービスを届ける人材に割いた方が圧倒的に成果が上がると判断した訳ですが、結局何に重きを置いて報酬制度を構築しているのか!?

POINTNETFLIXの報酬制度は業績志向(業績に対してどれだけ貢献したか)を最重要視.

業績への貢献度を明確に打ち出す事で、上司から気に入られているとか、年功序列みたいな不条理は無くなるし、そもそも無い袖(売上以上の給与)は振れない訳ですから分かりやすい。

TaNA
ただしこの手法は自社プロダクトを持つベンチャーでは採用出来そうでも、一般のSES・受託企業にはちょっと厳しいかなぁとも感じますね(;^_^

IT企業における評価制度

NETFLIXやGoogle、国内で言えばYahooのような自社プロダクトを持っている企業は別にして、それ以外の大多数(SESや受託がメイン)の企業では、どんな評価・報酬制度が取られているのか!?

TaNA
よく聞くのは半期毎に目標を立て、それに基づいた人事考課の結果で給与(ボーナス額)支給する制度ですが、評価基準が曖昧だし、SESでは直属の上司が現場にいないこともザラで、皆が納得する評価が行われているのかも不透明。

その問題を解決するため、以前勤めていたSES企業では、客先との契約単価に応じ、給与が算定されるフリーランスのような報酬制度(情報のオープン化も◎)でしたが、SESという業態には合っているかもしれません(良い悪いは人それぞれですが)

ちなみに本書を参考にベルフェイスさんは給与制度に市場価値の考えを取り入れて独自制度を構築されており、ホント会社の数だけ多種多様ですが、市場価値の観点は◎(金が無いと出来ませんが)

そもそも人が働く理由とは!?

一般的な人事制度では、頑張った人が報われる、成果を出した人が報われる、一見合理的な因果応報思想ですが、一方で殆どの企業でうまく機能せず、未だ洗練された形で運用されていないのも事実。

また哲学者の内田樹さんは著書・日本の文脈の中で「自分の努力に対して正確に相関する報酬が受け取れるというシステムがあれば、人間が働くと思ったら大間違いで、労働と報酬が正確に数値相関したら人間は働かない、だって何の驚きも何の喜びにもならないから。」の旨を指摘。

こちらの書籍でも、その話が紹介されています。

また報酬と動機を考える上では、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの論理と資本主義の精神」におけるカルヴァン派の予定説が資本主義を発達させた考察が参考になります。

TaNA
予定説の考えでは、神に救われる人間は生きている間、どれだけ善行を働こうが、逆に悪行を働こうが関係なく、既に決まっているもの。こう聞かされると皆諦めて堕落しそうですが、現実にはそうならず、現代の資本主義に大きく寄与していると解説。

ではどのような論理で人は労働に励んだのか!?

POINT全能の神に救われるよう決められた人間であれば、禁欲的に天明(職業)を務めて成功する人間だろうと考え、自分こそが救済されるべき選民との証を得るべく、禁欲的に職業に励んだ!!

ユヴァル・ノア・ハラリも虚構を作り出す人類の強さを書いていましたが、学習心理学の世界でも「予告された報酬」が動機付けを減退させるが明らかになってるらしく、ますます人事制度をどう設計すれば良いのか、人事の人は頭を悩ませることこの上なしです(;^_^